「無視すんじゃねぇ」


 トンッと肩を叩かれて、私はちょっと振り返り、寿の手をつかむとそのまま歩き出した。


 「おっと! 何だよ。言ってくれりゃついてくから」


 寿の声は聞こえたけど、右から左へスルーしてく感じで、私は手をつかんだまま寿を連行した。


 「どこへ連れてくつもりだよ?」

 「人がいない場所」

 「じゃあ車で良くね?」

 「女の子と遊ぶんでしょ?」


 後ろに団体さんがついて来てるのは気配で分かる。


 「俺が必要って言うんなら、そんなんいくらでも融通するし」

 「力……貸して」


 結局、私は寿に頼っちゃうんだ。

 みんなのひんしゅくを買いながら、私はリムジンに乗せて貰った。


 「あのあと、奈々が早退したの。私、どうすればいいのか、分からなくて……」

 「俺が新山とつき合えばすむ?」

 「どうしてそういうこと言うのっ!?」


 キレてる私、意味分かんない……


 「だってさぁ、新山は美希のダチなんだろう?
 俺別に新山のこと嫌いじゃねぇし、つき合うくらい問題ねーんだけど」


 何で軽々とこんなことを口にするんだろう。


 「寿にとって私たちは星の数ほどいる女の子の中の二人にしか過ぎないけど、
 奈々にとって寿は違うんだよ? 適当な気持ちで」

 「高校生で結婚を前提にしてつき合えって? ありえねぇだろ。
 所詮、遊びなんだよ恋愛なんか」




 遊び……




 「よく分かったよ寿。あんたには頼らない」

 「何怒ってんだ?」

 「私のこと好きだって言ったり、自分のこと知って欲しいって言ったのは、
 遊びが前提だからだったんだねっ!!」