鼓動が全然おとなしくならないよ。

 教室に帰ったら奈々はいなくて、かわりに星哉が私のところに来た。


 「何かあった?」

 「なっ何もないよ?」


 星哉は乾いた口調で


 「そっか」


 って言って、隣りの席のイスを引いて座る。


 「美希……今日部活ないんだけど、放課後出かけない?」

 「ほっ放課後?」

 「嫌か?」

 「ううんっ! すごく嬉しい」


 私って、ものすごくイケナイ人だ。

 彩並寿が好きだって気づいたのに、星哉とデートに行こうとしてる。

 どうしよう……星哉のことは好きだ。

 ずっとずっと昔から、好きだった。

 寿のことは、一過性のことかもしれない。

 あんな人、私の周りにはいなかったし、あんな体験も初めてだし。

 そうだよ、寿のことはちょっとした……なんて言うか、

 憧れに近いもので、恋愛感情なんかんじゃない。

 それを確かめに行こう。

 今日、星哉と。

 だけどその前に、奈々のこと、ちゃんとしなくちゃダメだ。

 しっかり話ししようと思って奈々が教室に戻って来るのを待ってたのに、

 帰りのHRになっても、戻って来なかった。


 「先生、奈々はどうしたんですか?」

 「体調が悪くなって、早退したんだ」

 「そっそうだったんですか……」


 奈々……大丈夫じゃ……ないよね。


 「星哉ごめんね。今日は奈々のところ行かなくちゃ」

 「何があったのか?」


 寿に告白されたなんてこと、星哉には言いたくない。


 「俺たちつき合ってるんだろ?」

 「そうだけど、でも……」

 「分かった。いいよ、ごめんな」


 星哉は優しく笑うと私を教室に残して出て行った。

 ごめんなさい……


 「美希~ぃ。お前も家に来るか?」


 呼び声にドキッとした。