「家まで美希を送ってやってくれ」

 「岡崎様お一人を、ですか?」


 鷹槻が訝しそうな顔をして俺を見た。


 「具合悪いらしいんだ」

 「そうですか……」


 岡崎と少し会話してから、鷹槻は岡崎とともに部屋を出て行く。


 「美希、家ついたら連絡しろ?」


 岡崎は、何も答えなかった。

 二人がいなくなると入れ替わりにエリシアが入って来たから、俺たちも外に出た。

 車に乗って場所を移動して、俺はエリシアの観光案内をし始める。

 が、主の意識はデートまがいの観光案内になんか向いてねぇ。

 あいつ平気かなぁ。

 もう家に着いてるんじゃねぇの?


 「寿楽様?」

 「ん! ワリィ、聞いてなかった」


 こんなこと、何度目だ?


 「恋人のことが、気になるんですね」

 「まぁ、な」

 「寿楽様が日本にいらしたのは一ヶ月くらい前と
 伺っていますが、知り合ったのはいつですか?」




 ついこの間……だがそんなことは言えない。



 「忘れるくらい昔。俺たちみたいなのは会社のために生きなきゃならないだろう?
 だからどんなに好きな人がいたって、会社の利益にならないと別れることになる」


 これは、事実だ。

 どんな事情があったって、どんなに互いが惹かれ合ったって、

 会社の不利益になるんだったら、結ばれることはない。


 「美希とはお互いに気持ち抑えてたけど…………
 今は二人のこと認めて貰うために、頑張ってる」

 「そうだったんですか……私、何も知らなくて……」


 エリシアがもの凄く申し訳なさそうな顔をして、うつむいてしまった。


 「美希様に申し訳ないことをしてしまいましたね」


 罪悪感を植えつけるのは可哀想だが、縁談反故にはいい兆候だ。


 「気にするなって。あいつも分かってて、今日来たんだから」

 「戻ってあげてください!」

 「えぇっ!!」

 
 エリシアの熱っぽい言い方に気圧される。