俺は前もって岡崎を連れて今日ここに来るって言っといたぞ。

 ジジイの頭ん中じゃ、岡崎美希が俺の最愛の人っつーことになってるはずだ。
 
 そんな奴の前で見合いなんかさせやがって、

 もし俺らがマジな関係だったら、岡崎の立場はどうなってたんだよ!


 「どうでした? 素の俺は」


 エリシアは微笑したまま答えない。

 やるじゃん、この女。


 「ささ、席に座りなさい」


 こうして見合いまがいのことが始まった。

 とはいっても先方の親はいないし、俺の両親もいない。

 いるのはジジイと俺と恋人役の岡崎美希。


 「ご趣味は?」

 「ナンパです」

 「寿楽様ったら」

 「ど~もワシに似てしまって寿楽は……おっといけない、口が滑った」


 くだらねぇ会話。


 「日本には観光で来たんですか?」

 「ええ。それと寿楽様に会いに」

 「じゃあ俺が観光案内とかしたら、目的とげられますね。外行きませんか?」


 そんなノリでジジイの巣窟を出ることになった。

 ワシも行く! と、きかないジジイを強引に説得して、

 俺と岡崎はエリシアが動きやすい格好に着替えて来るのを別室で待つことにする。


 「具合悪いのか?」


 さっきから岡崎が元気ない。


 「ううん……うん」

 「どっちなんだよ」

 「具合、悪い」

 「布団敷いて貰うか?」

 「いらない」


 岡崎にしちゃあ珍しく、覇気がない。

 うつむき加減のせいか、顔色も悪く見えて、ギュッと力を入れた口元が何とも頼りない。




 辛そうだ。




 俺は立ち上がると、障子を開けて、近くにいたメイドに言づてを頼んだ。

 しばらくして鷹槻が部屋に現れた。