実は、可愛いトコあんじゃん。


 「天守閣で会長がお待ちです」


 笑えるよなぁ、私室を天守閣とか言うんだから。
 
 ジジイは、まったくバカ殿様だ。

 天守閣まで行くと、和服従業員が大仰に頭を下げ、襖を開けた。


 「お待たせしてしまって申し訳ありません。失礼致します」

 「おぉ寿楽! 待っておったぞ~!!」


 立ち上がって走って来そうなほどス~ゲェ喜んでるジジイ。

 恋人紹介するために来たのに、何でジジイは喜んでんだ?

 俺はテッキリ嫌味とかいろいろ言われんのかと思ったぞ、前みたいに……


 「お久しぶりですね」

 「寿楽、連れのお嬢さんを紹介してくれないか?」

 「岡崎美希、俺の恋人です。美希以外の奴のこと、考えられないので、今日は」

 「お~ぉっ! 来たか来たかぁ」


 人が喋ってる途中だっつうのに、ジジイは遮った。


 「紹介するぞ。これがエリシアさんだ」


 いったい何のことだと思いながら振り返った俺、絶句。
 

 「またお会いしましたね、寿楽様。これって、運命かしら」


 余裕の笑みを浮かべながらしずしずと歩いてきた和服姿の美人。

 それはお茶を煎れてくれたメイドに違いない。


 「エリシア・ド・シュバリエ・イシバシです。どうぞよろしくお願いいたします」


 すっと俺の前に手を伸ばし、礼儀正しく挨拶する姿は華やかで無駄がない。


 「どうも……彩並寿楽です。エリシアさんも人が悪いねぇ。さっき言ってくれりゃあ良かったのに」


 手を取ると、その白い指は細くしなやかで、部屋の明かりに甲が滑らかに光っていた。

 思わず、口づけしたくなるような、すべやかな手だ。


 「こういう場だと、どうしても緊張してしまうから、本当はどんな人なのか、見たかったんです」


 なるほどねぇ、それで鷹槻はあんな不自然なことをして、

 ジジイは俺が恋人紹介するために来たっつーのに、こんなに上機嫌なワケか。

 見合いだなんて言ったら、俺ゼッテーここには来ねぇからな。




 ヒデェことしやがる。