佐藤課長の指摘で初めて
さっきのコメントの意味を知る。


ーーー普段からこんな風に
総評を書いてるんじゃ
ないんだ……


不覚にもこみ上がるものを
感じてしまう。


「お前らは、何も心配すんな。
先輩も上司も、本来下の者を
守るのが仕事なんだから。
こんなんに負けんなよ。」

ポンッと肩を叩かれる。


「有難うございます。
それじゃあ…失礼します。」

何とか、声が震えない様
平静を保ち、一礼して
部屋を出た。


階段にさしかかり
堪えていた水分が滲む。


…誰が通るか、わからないのに。

階段の踊り場で
壁にもたれ立ち
眼鏡をはずして
手の甲で涙をぬぐう。


「遅いぞっ!2号!」

階段の下から
大好きな人が呼ぶ声がする。

「すいません。直ぐ行きます。」

そう答えて、再び
フレームレスの眼鏡をかけた。

「おうっ
お腹すいたから帰ろうよぉ。
…ん?眼、疲れたかい?」

こちらを見上げる
俺の想い人ーーーー


総務のチビの言葉を
改めて噛みしめる出来事だった。