「係長、できました。」


重役の目に触れる資料だから
表やフォントにも気を配る様
修正のポイントを指摘され
入念に対応して、分析結果の
コメントをいれた。


「見せてみて。あ、神島君
印鑑をここに押すのよ。

…うん。なかなかの分析力だね。」


俺のサインと印の上欄に、
係長が確認印と“異論なし”と
コメントを書いた。


「係長…」


俺の下した分析結果は
この企画を却下する内容だった。

「キミは正しい判断をしている。
うちの会社は、
経営コンサルなんだよ。
このリスクは、この企業が負うに
重すぎる。
こんな提案はクライアントに
失礼だよ。」


あとは任せろと、
男前に言いきって
係長は笑う。

「さあ、それ、テルテルに
渡して来てくれるかな。
それが終わったら帰ろう。」

「…はい。」

帰るのが、嬉しくてたまんないと
言うかの様に、笑みを浮かべる
上司が、この上なく可愛い。