「何と無くな、分かったんだよ。」

しんみりとした表情を見せる竜の姿に私はズキっと心が痛んだ気がした。

「そう。」

私は竜から視線を外した。

「私ね、サイノウがあるーってずっとずっとお母さんに言われてて、すごく嬉しくてさ。サイノウは何でも出来る能力ってお母さんに言われてたの。でもお母さんが死んだ。頑張ってサイノウで目を覚ましてやりたかった。でも。無理があるなって気付いたんだ。」

私は少し早い口調で話す。

「そうか。辛いよな、ごめんな早くお前の気持ちに気付けば良かった。」

「ううん。竜は関係ないよ、私こそごめん。それに分からないんだ、自分がこんなになったことも。お母さんのせいにしちゃうんだよ、最低でしよ。しかもなんか友達もなんかたくらんでるようにしか見えなくてさ。誰も信じられなくて。それで…」

ぐすぐずと気付いたら私は涙を流していた。
すると竜はサラサラの髪をかきあげる。

「お前の話だから俺はあんまり首突っ込まない、お前が主人公の話しだろ?だから俺はその脇役にしかならない存在だ
。だからこそ頼って欲しかった。」

竜は私の涙をそっと手で撫でるようにしてふく。

信じないって決めたばかりなのに、こんな初対面の男を許したくなるなんて、やっぱり私は情けない。
でも信じてもいいかな、この感覚。
初対面とかぶっちゃけ感じなかった。

懐かしい。
君の胸に。


信じないか信じるか。
私が決めよう。
何を言おうが主人公は自分なんだから。