“サイノウ”何でもできる。

と母は言ったが、あれは嘘だ。

何でもできるなら。
死んだ母を生き返らせる。
それが私のサイノウを使う意味だ。

母が永眠してからずっと、死体を燃やすのを拒否した。
『急がなきゃ』といくら頭の中をサイノウの四文字で埋め尽くしても。

母は起きない。
死んだ母でさえ、私に嘘をついた。

あんなに、「あなたのサイノウは何でもできるのね。」って。

いや、中1にもなってそんなサイノウなんて。
魔法みたいなこと信じた私が馬鹿なのかもしれない。
今更になって情けなくなってきた。


目を覚ますことは無い母を。

『いいです。燃やして。』

焼き場で。



もう。手に終えなかった。