─随分長い間、目を閉じていたと思う。




予測と覚悟をしていた衝撃は、一向にあたしたちを襲ってこない。




恐る恐る目を開けると、あたしとユリの身体は、2階と3階の間、中2階の踊り場の壁に、尻餅をついた状態でよりかかっていた。




腕の中で、ユリがあたしの胸に顔を埋めてがたがた震えている。





「お前ら、大丈夫か!?」





先生たちがバタバタと階段を上がってくるのが視界に入った。





“…雫?”





その先生たちとは別の気配を感じて、周囲を見回す。





「唯、こっち…」




真後ろから、声。




雫が、あたしと壁の間に挟まれて、唸っている。




その華奢な両腕があたしの両肩をしっかり抱き抱えた状態で。





「なにしてんの、そんなとこで」

「呼ばれたから来たんですけど…」





そう言われて、一瞬前の自分の思考を振り返る。





“雫…助けて”





今まで感じたことのない恐怖のあまり、確かにそう心で叫んだ。





あの一瞬で、雫はあたしを助けに来てくれたのだ。