でもキツネにもゾッとした。
こいつには痛覚がないのか、と。
朱理が起きないように声を抑えて言う。
「なにしたんだよ、これ」
「怪我をした」
「それは知ってる。なんで怪我を、」
「関係ないわよね?あなたには」
確かに関係ない。
はっきりと拒絶をされると近づけない。
本当に、俺は臆病者だ。
「…これは病院いった方がいい」
「病院はいかないわ」
「こんなにも酷いんだぞ?!」
「包帯するだけでいいわ」
「病院怖いのか?」
頑固として病院に行こうとしないから
思わず言ってしまったが、
あのキツネだからそれはないだろう。
そう思ってたのに。
「ええ。大嫌いよ」
キツネが人間だと改めて思った。
完璧な頭脳、容姿、運動神経。
容姿はよくわからないが
そう言われてるキツネはある意味では
神かロボットのようだと思ってた。
無意識に。
でもそんなキツネに
大嫌いなものがあるなんて。
大嫌いとか大好きとか。
そんな感情は人間的だと思う。
キツネも人間なのに、
何故か改めて再確認した気分だ。