掴んでる腕が湿ってきた気がする。
よく見ると着物は血を吸いすぎて
濡れている。
搾れるくらいに。
「離してくれるかしら?」
さっきとは違う、冷たい声に
思わず、
「やだ」
反対してしまった。
内心ではキツネに反対なんかして
クビになるかもと焦ってるけど、
掴んでる腕は離せなかった。
「怪我した時はな。
包帯だけじゃたりないんだよ」
キツネを棚の近くの椅子に座らせる。
棚からガーゼと消毒液を取り出し、
キツネから包帯を奪いとる。
「はい。腕見せて」
キツネと向かい合わせになって言う。
素直に腕を見せたキツネに驚いたが、
怪我をみた瞬間もっと驚いた。
「えっ、これって。やばいだろ」
腕の怪我は酷かった。
鋭利なもので切られたのか、
肩から手首までザックリ。
骨が見えるところもあってゾッとした。