キツネは真っ直ぐに棚に近づいた。


俺は初めて見たキツネに
驚きと何故か恐れを感じた。


棚から包帯を取り出したキツネから
目を離せず扉の近くで立ちすくんだ。


「ねえ」

鈴のなるような、
まるで音楽を奏でるような声でキツネは
言った。


「出て行かないの?」


拒絶にも聞こえる言葉に
体が固まった。

キツネのお面を俺に向けてるキツネは
本当に俺を見てるのだろうか。

「もういいわ。私が出るから」

ため息をつきながら俺のほうに、
扉に近づくキツネに違和感を感じた。

包帯を持ってない腕の着物の色が
少し濃いような気がする。

俺の横を通りすぎようとする、
キツネの腕をつかむ。

「っ、」

息を飲むキツネを見て確信する。


「お前、怪我してんのか?」

キツネの腕をつかむなんて。

自分でも驚いた。


恐れを感じてたのも吹き飛ぶくらいに。