「………」




何も変わらないのは、話を聞いただけの場合。

だけど、私の手元には友田の未来を変えるものが握られているのを彼は知らない。





もし、知ったとしたら……





きっと何もかもを放り出して、彼女の下へと走る去って行くのだろう。

もしかしたら、書くことすらも置いて言ってしまうかもしれない。





「あの……聞いてもいいですか?」


「なに?」



視線をこちらに向けること無く答える友田。
その横顔を見ながら、ふとここであのメモを渡してしまえば全てが終わりになる。


そして、里美さんのところへ去っていく友田の後姿を見送らなくてはいけないのだ。




それは、私の中に『渡さない』という選択肢を生んでしまった。