そこから少し走り、二人はデパートのそばにある三階建てのビルの前で止まった。


洋服のチェーン店だ。深夜なので、入口のシャッターは閉じられている。


そのシャッターが、震えていた。中から、激しい物音が聞こえてくる。


遊美は、シャッターと鍵を玩具を壊すかのように簡単に破壊して、勢いよく開けた。その後ろにある自動ドアもこじ開けて、二人は中に踏み込んだ。


店内は、オレンジ色の間接照明に照らされていた。


売り場は荒れていた。


棚がいくつも倒されて、商品の洋服やズボンが床にちらばっていた。


壁に穴があいている箇所がいくつかあった。


そんな店内を、ひとりの男がふらつく足取りで歩いていた。若い警備員だ。頭から、血を流している。間接照明のせいで、それはひどく黒ずんで見えた。


警備員は、二人に気づくと、うつろな目を向け、小声で、あっとつぶやいた。


そのときだ。


「やかかかかっ、やかっ、やかっ、やかかかかっ」


黒い、十五センチメートルくらいの棒状の何かが回転しながら飛んできて、警備員の側頭部に当たった。声をあげずに、警備員は床にたおれた。