「学校何時?」
左手でコーヒーをすすり、右手で新聞を広げて読んでいる。視線を新聞から外さず、こちらに聞いてくる。
「8時30までには着いておきたいから、7時45分には出るつもり。」
器用に読むなと思いながら私もコーヒー片手に返事をする。
そうすると社長はチラッと壁に備え付けられた時計をチラッと見て、新聞を折り畳みテーブルの傍らに置き、ようやくプレートに手をつけた。
そんな社長を横目に私はパンの上に乗った半熟の目玉焼きの黄身がとろけ出して、いかにプレートの上に溢さず口に運べるかと葛藤していた。
結局、黄身の半分をプレートに溢れでてしまい、勿体無いのでパンを千切って拭き取るように染み込ませて食べた。
ちまちまと黄身が染み込んだパンを食べながら社長を見ると、意外と豪快にパンに食らいついており、私が苦戦した半熟の目玉焼きもプレートには一滴も黄身が付着しておらず、綺麗に完食していた。
「なんか付いてるか?」
まじまじと見過ぎてしまったのか、私の視線が気になったようだ。
「……別に。」
なんだか急に恥ずかしくなり、視線をそらした。
社長は不思議そうな表情をしていたが気にも止めず、また新聞を読み始めた。