「愛する彼氏がいるのに、別の男の家で朝ご飯を作ってるなんて殊勝なこったな。」



「嫌なら食べなくて結構です。」


そっぽ向いて社長の分のプレートとコーヒーカップに手を伸ばし、片していく素ぶりを見せる。


「別に食べないとは言ってないだろう。」


椅子に座りながら足を組み、左肘を背もたれの上に置き、右手の平を机の上に置き人差指で二回テーブルをトントンとたたく。


元の位置に戻せと言っているのだろう。


なぜそんなに態度がデカイのかと一言文句を言ってやろうかと思ったが、不毛な気もしたのでため息を一つついてから黙って元の位置に戻した。


しかし、この人は一体私に何をやらせたいのだろうか。


もとい、情報収集ではあるのだけれど。


愛人契約だと言うわりにはそういった関係を求めてこないし、家事をすれば皮肉を言う。


なんのための愛人契約なのか皆目見当もつかない。

理解不能だ。


「それはそれで案外そそられるな。」


「え?何?」


「男がいるのにって話だよ。」


「バカなこと言ってないで早く食べて下さい。」