「紗香」



向こうから誠がやって来る


…嫌だ


誠を見ると、ふと蘇ってくるあの瞬間



まだ…許せる気分にはなれない


「…………」



私はそっぽを向き、顔を伏せる

「…なぁ、俺なんかしたか?」


昨日から素っ気ない態度をとっている私に

戸惑いながらも聞いてくる誠



「…何もしてないんじゃない」


そう…誠は何もしてない


ただ、正論を言っただけ



「…ねぇ、誠」



「…何!?」



私が声をかけると顔を明るくさせながら私を見る誠



「私と愛華ちゃんって、どっちが可愛い?」



「そりゃあ、愛華ちゃんだろ」

当然とでも言いたげにふんぞり返っている



「ふーん…」



「冗談だって!でも紗香は可愛いより綺麗系だよな」



それを冷めた目で見つめると、焦ったように慌てだす



「………」



冗談…ね



「やっぱり…そうだよね」



可愛いのは愛華ちゃん


大樹にお似合いなのは誰から見ても愛華ちゃんなんだ



…って何考えてるんだろ




そして事は起こった



「これって…何?」