ふうーっと吐き出された煙りは、少し開けた窓の外に流れていった。


「・・・元は、俺にも責任がある・・・。俺の仕事があんなだから、お母さんも大変だったんだろ・・・。お前が小さい頃さ、二人共生活が不規則じゃ可哀相だって話したんだか・・・。勝手に、俺の息子なら大丈夫なんて思い込んでた・・・」


パッと信号が青に変わり、まだ長い煙草を小さな灰皿に押し付けた。


「女が子供の世話をするのは当然だって思ってさ、母さんに殆どお前の事押し付けてた。・・・相談されても、疲れてるって理由で聞いてやらなくてさ・・・」


母さんが一番疲れてたのにな、何て親父は震えた声で言う。

幼い記憶の中に眠る楽しい思い出には、全部お袋がいた。

仕事して、家事をして・・・疲れていても、いつも笑っててくれたのに・・・。


「男ってのは、やっぱり駄目だな・・・」


親父が差し出したポケットティッシュを見て、俺は自分の目から涙を流している事に気付いた。