エンジンをかけ走らせると、騒がしかったチャ太郎も静かに窓から外を見つめるようになった。

静まりかえる車内。

・・・あれを、聞いてもいいだろうか・・・?

家に着いてしまったら、お袋がいるからきっと聞けない。

でも、やっぱり聞く勇気がない・・・。


「・・・寛久・・・お前、母さんが憎いか?」


俺の心を読むように、親父はお袋の話しを出してきた。


「・・・正直、腹が立つよ・・・」


何年も嫌ってきた奴だから、今更好きにはなれないかもしれない。

突然謝られても、今更何を言ってんだって思う。


「なんで親父は、お袋を許したんだよ?」


息子の俺がこう思うのに、親父だって思わない訳がないだろう・・・?

前方の信号が赤になり、ゆっくり車はスピードを下げる。

親父は胸ポケットから水色の箱を取り出し、一本煙草にライターで火をつけた。