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まさか・・・・なんて思っていたのに、それから一時間位した後、本当に親父が家にやって来た。

行くぞなんて言われて外に出ると、見慣れた車が一台雪に埋もれるように置いてあった。

黒の乗用車の上には厚い雪がつもり、またその上に静かに雪が積もっていく。


「寛久乗れ」


チャ太郎を後部座席に座らせ、俺は助手席に乗り込んだ。

本当は親父の隣は嫌だったが、初めて乗る車にチャ太郎が落ち着かないので仕方なく助手席に乗った。

久しぶりの親父の顔は、前と特に何も変わってないが、髪に白髪が増えている気がする。


「元気な犬だな?」

「雪が好きらしいんだ」


車の中をうろつくチャ太郎を、親父は楽しそうに見つめた。

何を話せばいいのかお互い解らなくて、ひとつの会話が一言で終わる。