あらゆる規則で統制された故郷では、犯した罪には細々と罰則規定が設けられていた。
自分に与えられたのは、人間界追放、1ヶ月。
故郷の人間はヴァンパイアに慣れているし、やたらに血を吸う生き物ではないと知っているから、飢え死にしそうなヴァンパイアがいたらほとんどの人間は血を提供してくれる。
……だが、人間しかいない人間界は、違う。
「くそ……」
今日何度目かわからない悪態をついて、ずるずると背中を暗い路地の壁に付け、座り込んだ。
1ヶ月の人間界追放で死んだ奴なんて聞いたことがない。
だから完全に油断していた。
そういえば、他のヴァンパイアは1カ月くらい血を摂取しなかったところで他の食べ物で代用できるんだったな、と今更に気付いた。
……もし純血種じゃなければ自分もそうだったろうに。
古くからの血筋を大事に守ってきた、一滴も人間の血の混じっていない純血の自分には、それが出来ない。
生きるためには、どうしても血が必要だ。
「……どうしろって言うんだよ……」
背中を壁に付け、足を伸ばし片方の掌を額に当てる。
途方に暮れ、体力も気力も限界だった。
次第に意識が遠のいていく。
ぼんやりとかすむ視界の中で、降り続く雨だけが皮肉なくらいに美しく映った。