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「……い、黎!!」


「え……」



血を提供しにきてくれた幼馴染みの美紅が、下から俺を睨む。


美紅は隣に住むヴァンパイアで、昔からよく血をもらっていた。


彼女も純血なので、人間の女より、他のヴァンパイアより、ずっと濃厚で甘い血をしている。



……そう思っていた。




「なんなの?飲むなら飲んでよ。血がもったいないじゃない」


横たわっていた美紅が、俺が噛んだせいで血が滲んでいる首筋を片手で押えながら上半身を起こした。



「悪い……、なんか、気持ち悪……」



少し彼女の血を口に含んだだけなのに、急な吐き気に襲われて、俺は思わず口を掌で覆っていた。


そんな俺を、美紅は信じられないとでも言いたげな目で見る。



「私の血が飲めないの……!?」


「違……、たぶん、今まで人間の血しか飲んでなかったから……」


「そんなことで吐き気がするわけないでしょ?」



人間の血を飲んで気持ち悪くなるなら分かるけど、と美紅は訝しげな顔で俺を見た。


そして、小さくため息を吐く。