しとしとと、穏やかに雨が降り続いている。 長く、何も食べていなかった。 身体を、そして心を蝕む空腹の悪魔が、理性を少しずつ削っていく。 「……クソ」 ガリ、と自分の手の甲に鋭い歯を立てた。 じわりと血がにじむ。 ペロリと舌を滑らせて微かに感じた血の味は、恐ろしく不味い。 ……それはそうだ。 自分の、しかも男の血。 今まで毎日のように純粋で高潔な、美しい女の血しか口にしてこなかった自分にはその違いは酷過ぎた。