父の表情は躊躇っていた。


「だって、りんさん口元の黒子が可愛いし。……お母さんと思い出の写真ってあまり無かったから――」


「綾ちゃん。私で良ければ沢山撮って頂戴! 構わないわよー? 嬉しいくらいよ?」


「綾、ゴメンな。気づいてやれなくって。ただ、その携帯はお父さんの前では止めてくれないか?」


これが私の母だと? 良い香りの香水のはずが、この人が付けると獣の匂いに変身する。


そうだ。これはメスの臭いだ。そしてお父さんは獣に喰われ、只のオスになったんだ。


――せめて動物でも良いから味方が欲しい。