「……」


なにも答えなかった。この教室では最早なにも、語りたくはなかった。るいを冷たく見返し、教室を後にした。


「先生! 猿田先生! ちょっと待って!」


息を切らし、猿田の後姿を呼び止めた。憎たらしい敵の背中を。


普段なら会話を交わすのも嫌な悪臭を漂わせる口、見たくも無い汚らしい顔。まさか自らが悪の権化に話し掛けるとは思いもしなかった。


「なんだい? 山田綾さん、寂しくなっちゃったのかーい? 先生だって離れたくないよ~ちょっとの辛抱だ。我慢してくれよハニ~」


「……ちがっ――ねぇ先生。どうしてそんなに力を持つことが出来るの?」