おもむろに、にやけている生徒もいた。猿田がいない……看守のいない囚人のように、それは気分が解放される嬉しい話だった。


「なんだよ。行っても一日くらいだよ、そんなに悲しむなよ? 

ホームルームは以上! 皆、曜子さんの分までお勉強を沢山しましょう!」


教卓をバンっと両手で叩き、耳毛がふんわりと上下した。出席簿を脇に挟み、教室を出て行った。


――私はこの時、この瞬間、覚悟を決めたんだ。後頭部の痛みと心の傷が、きっと嗾けたんだ。


ハンカチで適当に涙を拭き、鞄を掴んだ。


急に立ち上がった私に、るいは酷く驚き、見上げていた。


「綾、どこへ行くんだ?」