部活のメンバーで街に出掛けることになった。一通りいろいろな所を回って本屋があった。

「ちょっと雑誌みたいから寄らない?」

美菜はそう言ったので本屋に入ることになった。

「ちょっと葉加奈こっちきて!」

急に美菜は私を雑誌コーナーから少し離れた所まで連れ出した。美菜とは仲はよかったけど、人を連れ出すのは珍しい。

「ちょっと美菜、急にどうしたのさ。」
「あのね、みんなにはまだ言ってないんだけど・・・私ね、直と付き合うことになったんだ」

・・・・・・・・え?



言葉が何も出なかった。

「そうなんだ。よかったじゃん!」

私は美菜に自分で思ってもいないことを言った。だって・・・
たった今、美菜の言葉で私は直のことが好きになっていたことに気付いたから。

家に帰ってから、なんで美菜なんだろう。なんで今まで気付かなかったんだろう。なんで直は私にいってくれなかったのだろう。私がもっと早く気付いてたらどうだっただろう。
頭の中でぐるぐるリピート。私自身が壊れそうだった。壊れたならどんなに楽だろうか。
いつもなら私が昨日ねたから私から今日メールするところだが、今はそんな余裕もない。そして心のどこかで直から連絡がこないかと思っているのかもしれない。


・・・私の携帯が点滅した。
これはメールを受信した合図・・・。私はとっさに携帯を開いてしまう。

<受信メール  直>

・・・直からメールが来た。
なんでこんなことだけで今まで壊れそうだった自分が救われるのかな。

[早乙女~?]
[なに~??]

メールが来ただけなのにベットに顔を押し付けて・・・私の目から涙が出た。

[早乙女からメール来なかったから暇でメールしてみたww]
[ごめんね。メールしなくて。]
[大丈夫だってw気にすんなw]

[ねぇ。直って美菜と付き合ってんの?]

私は馬鹿である。
こんなこと聞いてまた傷つくだけなのに。でも、私は期待しているのかもしれない。
美菜と付き合っていないと直が言うのを・・・。

[何でそう思うの?w]
[今日聞いたからw]
[早乙女はどっちだと思う?w]
[付き合ってると思うーw]

なんで分かっているのにこんな聞き方しちゃうんだろう。

[付き合ってるよw]
[やっぱりw]
[葉加奈しかこんなこと言える人いないんだからな?誰にも言うなよ?w]

直接事実を突き付けられたのにどうして悲しくないのかな。そんな自分にも腹がたつ。
悲しくないのは、直から伝えられたから?
それとも私しかこんなこと言える人いないって言われたから?

それとも・・・
初めて私のこと葉加奈って名前で呼んでくれたから?