――ダンッ…
「あ…お…?」
壁と蒼に挟まれる。
…連れてこられたのは資料室。
もう使われてないから人は来ない。
「…キス、しろよ」
「……え?」
「沙耶にとってキスって軽いもんなんだろ?」
「ちが…!」
「知らねぇ男にキスしたくせに?」
「…っあれは…」
蒼が蒼じゃないみたいで怖い。
蒼を退学にしたくなくて…仕方なくキスしただけ。
あたしだってしたくなかった。
「…いいから俺にもキスしろよ」
「やっ…!」
「なんでだよ?あの男には出来て俺には出来ねぇの?」
…蒼にキスしたくない。
こんな形で…キスしたくない。
「したく…ないっ…」
「それおかしいんじゃねぇの?」
「えっ…?」
「知らねぇ男にしかキスしねぇの?普通知ってる男だろ」
「…蒼…だから…」
「沙耶が理解出来ねぇ。」
「蒼ぉ…聞いて…よ!」
「何も聞きたくない」
冷たく拒絶の言葉を言う蒼。
…蒼。
キス、しなかったら蒼なにしてたの?
ねぇ…殴りかかろうとするでしょう?
あの時のあの瞳は本気だった。
あたしがあぁしなきゃ蒼と一緒にいれなくなる。
楽しい高校生活が楽しくなくなっちゃうよ。
蒼が離れてくのが嫌だったのに…。
「蒼…の…バカっ」
「あ?」
「バカ…バカバカ…」
「…んだよ」
バカって言う度に流れ落ちる涙。
バカはあたし。
…バカって言いたいんじゃない。
好き…って言いたいよ、本当は。
でも…どうしても言えそうにない。
「蒼…大嫌い」
「…っ!?」
そう言ってあたしはそっと触れるだけのキスをした。
…頬じゃなく、唇に。