「束縛激しい男って愛想尽かされるよ?」
「沙耶は尽かさないよ」
「じゃあ沙耶の気持ちは変わらないと?」
「あぁ」
「じゃあ1日くらい預けても大丈夫ですよね?」
「…っ話が別だ」
「なにが」
「あ、あお!」
「沙耶が苦しんでるからだろ!」
「苦しんでる?」
低く怒ってるような声。
いや、だってそうだし。
お前が縛り付けてるからだろ。
……なにかで。
「苦しんでるのか?沙耶は」
「ちが、うよ?」
「苦しんでるとか君になにがわかるの」
「え?」
「君に僕と沙耶の何がわかるんだ!」
「拓海!落ち着いて!」
「僕の苦しみが君にわかるのか?」
「苦しみ?」
「絶対わからないよ。まぁ結果的には沙耶がいるからいいんだけど」
「……なんなんだよ、お前」
「僕は僕だよ」
「………」
「拓海、帰ろう。あお、じゃあね!」
「……っ」
だからさ、泣き笑顔で言うんじゃねぇよ。
どうも出来ねぇじゃん。
……もう引き止められねぇよ。
お前らの過去なんて知らねぇし。
苦しみもわかんねぇ。
「いつから…んな遠くなったんだよ…」
沙耶と開いていく距離が、苦しい。
――好きなのに、届かない。
いや、届かしちゃいけない。