「…あたしっ…お兄ちゃんが好きなのっ…」
「あぁ」
「家族の中で唯一好きになれた人なの」
「あぁ」
「…お母さんとお父さんなんかだいっきらい…」
「………」
泣きながら話す、清。
俺が思っていたよりも相当暗い、闇。
……清が、なんでこんないいやつがそんな目に遭うんだよ?
純粋なやつが……。
「自分勝手でわがままで…自己中で……」
「うん。」
「あたしがいるのに…知らない男のひとが来て聞きたくもないお母さんの声が聞こえる…」
「……清…」
「お父さんも家に来て同じようなことをする…」
「………」
「お兄ちゃんだけは来ない。来てくれないのっ…」
「……っ」
「だけどみ、んな…お兄ちゃんからあたしを…離そうとするっ…」
「……うん。」
「あたしから…っお兄ちゃんを奪っていくの…!」
初めて、本音を聞いたような気がした。
これが本当の清なんだと思った。
清がこんな闇をこんな小さな体で抱え込んでいたなんて。
自分よりも遥かに大きい闇。
その闇に清は飲み込まれてて。
自分だけじゃもう抜けられない。
……そんなところまで来ていた。
「あたしの中で…家族はお兄ちゃんだけ…」
「………」
「お兄ちゃんしか、要らないっ。…あんな人たちの血なんか要らない…!」
「それじゃあここに清はいないんだ」
「……っあ、おとくん…」
「な?こうして出会うことだって出来なかったかもしんねぇんだよ?」
「産んでくれたことは…感謝してる…」
「ん。…それならいい」
少しずつ、しこりを解消していこう。
一歩ずつ闇から抜けていこう。
……2人でなら抜け出せる。
「蒼斗くん」
「ん?」
「ありがとう」
「…いーって。」
「お兄ちゃんと、ちゃんと会ってくるね」
「え?」
「だから、蒼斗くんも会ってきて」
「……だれに?」
「沙耶ちゃんに」
「アメリカまで行く金ねーよ」
「……沙耶ちゃん、今帰ってきてるから」
「は!?」
「…荷物の整理だとかで」
荷物の整理?
――もう帰ってこねぇってこと?
本当に大学なるまで会えねぇの?
……マジで婚約してんの?
「行って、蒼斗くん」
「悪い、ありがとな!」