「…清が辛くなるだけだろ?」

「蒼斗くんが辛そうだとあたしも辛いよっ…」

「…清……」









お願い、蒼斗くん。

今だけ、抱き締めて。

あたしを沙耶ちゃんだと思って抱き締めて。

蒼斗くんが少しでも、楽になるならあたしはいいの。

今は何も考えないで、ただ気持ちで動いて。








「じゃあ、お言葉に甘えて。」

「わっ…!」








腕をグイッと引っ張られて蒼斗くんの腕の中。



蒼斗くんの、鼓動が聞こえる。

トクン…トクンって。

――蒼斗くんにも聞こえてるかな?

あたしの鼓動が。

ドキドキ鼓動が速い心臓の音が。









「あー…ごめんな、清」

「え…?」

「情けないよな、俺」

「そんなことないよっ…」

「清……ありがとな」








掠れた弱々しい“ありがとな”。


少し上擦った声で、震えてる。

――やっぱりあたしじゃダメなんだ。

そう痛感して、鼻がツンとした。

泣いてはいけない。

自分から望んだことなんだから。

あたしはいつからこんな醜くなったんだろう。

最低で、最悪で。



1番なりたくなかった、お母さん見たいになってる。

やっぱり血は争えない?


――要らないよ、こんな血なんか。








「蒼斗くん…」

「ん?」

「ごめんなさい…っ」

「えっ?」

「あたしっ…最低だ…」

「清!?」








泣き崩れる清をぎゅっと蒼斗は抱き締めた。


少しでも、泣き止むように。

安心出来るように。