「…蒼斗、帰んぞ」

「………」







さっきまでいたはずの沙耶がもういない。

沙耶の香りが、温もりがない。

――……行ったんだな。







「置いてくよ!?蒼斗!」

「…結愛、やめろ。」







沙耶がゲートの中に消えていってからもう…何時間経った?

まだ30分?いや5分だろう?

……時間がゆっくり感じるのは俺だけか?

時間が止まったように思うのは俺だけか?

違うよな?







「あれから2時間経ってるんだよ!?小夜たちはもう帰らせたけど…」

「…仕方ないだろ。」

「なにが!?手離したのは蒼斗でしょ!?今頃後悔してどうするの!」

「……そう言うな。」







2時間……?

もうそんなに経つんだ。

あー…やっぱ時間が止まったように思うのは俺だけみたいだ。

みんなの時間は動いているんだ。


……なぁ次はいつ帰ってくるんだ、沙耶。

それとももう帰ってこねぇ?

“拓海と結婚しました”

とか言って帰ってくんのか?

……そんなの認めねぇよ?







「帰ろーぜ」

「あ、やっと動いた」

「結愛はごちゃごちゃうるせーよ。」

「動いたと思ったら偉そうに!」

「…男にだって色々あんだよ」

「はぁ!?どうせ淫らな事しか考えて…」

「…ゆーあ。淫らな事しか考えてないのは聖也だけだっつーの」

「え!?お前そこで逃げる!?」

「…逃げてねーよ」

「そうだったね。ごめん、蒼斗」

「別に気にしてねーよ」

「え、待て。彼女としてそこ認める?つか認めていいわけ?」

「蒼斗口調おかしい」

「……あーまじか」

「待て、無視?いや俺エロいけど…エロすぎるけど…」

「「うるさい」」

「あ、すんません…」








こうやってバカやってたら少しは考えなくてすむんじゃないか。

……沙耶、俺は1度だけ。

お前じゃないやつと恋愛することにする。

それまでお前のことは考えないし、思わないことにする。