「…あ、お……?」

「沙耶っ…!!」

「……あおっ…」







あぁやっぱり蒼の腕のなかはあたしの安心出来る場所だ。

――やっぱりあたしの居場所はここしかないよ。

でもいれない。


そんな思いを感じ取ったのか蒼はあたしを抱き締める力を強くする。







「…行くな」

「………」

「行ってほしくない。沙耶にはずっと側にいてほしい」







ねぇ、蒼はわかってる?

今その言葉がどんなに残酷か。

あたしの胸を痛くさせるか。

――あたしね、いれないよここに。

ずっと居たいけど居れない。

居たくない。








「蒼、時間になっちゃう」

「……いいじゃん」

「みんなにまだなにも言えてない」

「いらないよ、そんなの」

「……蒼…」

「俺だけでいいじゃん。」

「結愛も小夜も翔大くんも聖也もみんな…あたしの大切な人だもん」

「……そんなんじゃ…やだ」

「蒼が求めてる言葉は…なに?」

「…ズルいな、沙耶は」







そう力なく微笑む蒼斗。

そんな顔を見たいわけじゃない。

でもあたしたちは別れた。

だから“好き”も“好きな人”も言えない。

それくらいわかってよ、蒼。

あたしは言いたくないんじゃなくて言えないの。

言えるわけない。