「沙耶…っ…」

「ねぇ蒼、ごめんね」

「え?」

「どうして幼なじみなんだろうね」

「……っ」







幼なじみじゃなければ出会うことすらなかったかもしれない。


今沙耶は、俺に出会ったことを後悔している?

……なぁやめろよ、そんなの。

俺は沙耶に出逢えてよかった。

嬉しいよ。







「沙耶」

「来ないで、蒼。洗い物終わってないでしょ?」

「…沙耶、後悔してんの?」

「するわけないでしょ?蒼が幼なじみじゃなきゃ嫌だもん」

「沙耶…」

「でもね、特別になったことは後悔してる。…少しだけ」

「…ごめん…」







俺は謝ることしか出来なくて。

俺のこの気持ちが沙耶を傷つけていて。

えぐるように痛い胸も沙耶の方がずっと痛いに決まってて。

傷つけたくない人を、

守り続けたい人を、

俺は今傷つけ、失う。








「謝んないで、蒼。これはお互いで決めた道だもん」

「さ…や…」








傷つけられても、痛くても沙耶は俺に微笑む。

……俺がいつまでもガキすぎる。

俺の負担を少しでも軽くするために微笑んで、

“大丈夫だよ”と俺を責めない。

自分の思いは心の奥底に閉まって鍵をかける。

――沙耶はそうだった。