聖也を部屋へ連れてくる。

リビングからは沙耶たちの笑い声が聞こえてくる。

……沙耶、笑わなかったな。







「てめぇは…なにベタベタしてんだ!」

「へっ…ヤキモチなんて見苦しいぜ?」

「あのなぁ…!」

「つかヤキモチなんてお前妬けないはずだけど?」

「……っ」






……知ってるよ、わかってるよ。

でも沙耶は俺の彼女だろう?

ならなんでベタベタすんだよ?

沙耶もなんで許すんだよ?

八つ当たりなんて最低だ。

でも…っ嫌なんだよ!!







「…別れを、決意してるかもよ?」

「……は?」

「清ちゃんの事に集中したなら距離置いた方がいいってなるだろ」

「……いや、意味わかんねぇし」

「わかんだろーが。…清を助けたいなら沙耶と別れるのが筋だ」

「…んだよその筋。別れなくてもいーじゃねぇか」

「どちらもお前は傷つけんだよ」

「………」

「考えろよ、先の事まで。目の前のことばっか見んな!」

「……っ!」







ハッとした。

俺は――………ばかだ。

沙耶と付き合ったまま清を助けるなんて…。

清も沙耶も傷つけることになる。

…なんで気づかなかった。

なんで目の前のことしか考えてねぇんだよ、俺は。







「答えを出すのは、お前らだ」

「……あぁ」

「でもきっと沙耶は別れを決意してる」

「……くそっ」

「仕方ないじゃねぇか」

「……嫌なんだよ、沙耶が他の…」

「欲張りだなぁ、お前は」

「……そうだな」

「でもその間にいい人と沙耶は巡り会うかもしんねぇよ」

「……もう出会ってるよ」

「は?」







いい人と沙耶は巡り会った。

……拓海、ってやつ。

そいつを罵れば、沙耶は怒った。

出会いがあったんなら、そいつ。

…拓海、か……。