「じゃああたし帰るから」
「沙耶!?おい!」
「小夜ちゃん?蒼よろしくね!」
「…待って」
「…ん?」
「蒼ってやめてもらえません?」
…蒼って呼び方?
なんで?どうして?
「なんか親しい感じがして嫌です。せめて蒼斗とか」
「…せめてって事は本当はなんて呼んでほしいの?」
「木崎くん」
まるで氷の槍が胸に刺さったように、
酷く痛くて、酷く凍えた。
“木崎くん”…1回も呼んだことない。
遠くなるんだ…。
本当はこれが正しい距離?
「…そっか。…気を付けるね」
「沙耶!?」
「…木崎くん…バイバイ」
ちゃんと笑えたかな?
震える声を隠せたかな?
目に涙が溜まってるのバレてないかな?
…ねぇ蒼。
なんであたしこんなに胸が痛いんだろうね?
「うぅ…っあぁ…っ!」
…ねぇ蒼。
なんであたし、こんなに泣いて居るんだろうね?