「はい、清。」

「…ありがとう♪」






なんか、複雑。

だって…もう帰るんでしょ?

買ってしまったし、もうなにも…ないもんね。

これを受け取ったら…帰んなきゃいけない…。







「清?」

「…ありが…とう」

「…うん。じゃあ清、家まで…」

「いい!」

「…えっ?」







きっとお兄ちゃんは“送るよ”って言おうとした。


――そんなのいらない。

そんな風にされたらもっと離れたくなくなる。







「あたし、1人で帰れる」

「でも危ないから…」

「平気っ!!お兄ちゃんこそ…早く帰ったら?」

「え…」

「彼女、いるんでしょ?」

「…っ//!?」







顔が真っ赤。

……もう暫定。

携帯を気にしてどこか上の空で。

あたしにバレないわけないのに。

あたしといるのに上の空で…すっごく悲しかったんだから。


お兄ちゃんにはもう、“居場所”が出来てしまったんだ。

“帰る場所”が。







「じゃあね、お兄ちゃん」

「清…っ!違うって!」

「なにが!?なにも違くない!!」

「清…!!」

「離してっ…!!」







あたしを抱き締めるお兄ちゃん。

この匂い、温かさ、全部好きで…安心出来た。

――でもちがう。

今はもう違う。

…この匂いも温かさも全てが嫌いだ。








「清!!違うから」

「離せっ…嫌いだっ…お兄ちゃんなんて大嫌い!!」

「…っ清!」







どんなに“大嫌い”と言っても離してくれない。


……離してよ。

あたしだけおいてけぼりにしたくせに。


あたしの心はどんどん闇に包まれてく。