フェンリルの名を与えられた以上、彼にもプライドがある。

神話に語られる狼として、無様な負けだけは己が許せない。

爪を立て、牙を剥き、襲い掛かってくるフェンリル!

擦れ違い様の斬撃で、羅刹の胸板が、背中が斬られた!

如何に羅刹といえど、このスピードの差だけはどうにもならない。

速さ比べはフェンリルに分があった。

ガードを固めたまま、フェンリルの高速の爪に翻弄される羅刹。

しかし、勝機を見い出したのか。

「亀のように固まるのはやめだ」

彼は突然、防御の構えを解く。