羅刹の言葉に何か感じるものがあったのか。

フェンリルはマットを蹴ってその場から消える。

消えたと思えるほどの高速。

次の瞬間には。

「ぬぅっ!」

背後に回り込んだフェンリルが、羅刹の肩口に食らいついていた!

メキメキと音を立てて、羅刹の肩の筋肉に食い込む牙。

姿こそ人間と同様だが、生え揃っているのは『歯』というよりは『牙』。

犬歯は特に発達しており、相手の肉を噛み千切るのに都合よくなっていた。

自然と発達したものではない。

明らかに人為的に発達させられたものだった。