と。

「!!!!!」

ゾクリ!

フェンリルは思わず距離を置くべく後退した。

冷気を浴びせたのはフェンリルの方だというのに、肌が粟立つほどの戦慄。

白煙の中から、鳥肌が立つほどの殺気を感じる。

…白く煙るオクタゴンの向こうから、真紅に輝く双眸だけが見える。

「フェンリル…西洋の知識には疎いが、確か北欧神話に登場する狼の姿をした巨大な怪物だったな…」

ゆっくりと、白煙の中から羅刹が姿を現す。

「神話に名を冠する存在ならば、このような小細工をせずに正面から挑んで来い」