今すぐ怒鳴り散らしたい気持ちを武はぐっとこらえる。

しとしと と、窓に打ち付ける雨にさえいら立ちを覚える。

武は、ふっと深呼吸を一つして、

「・・・わかりました。」

と、
つぶやいた。

「え?」

いつもは厳しくしかりつける武が
大人しく引き下がったもんだから、

昴は、ちょっと驚いたようにきょとんと
姿勢を正した。


「えっと??
 あのぉ・・・武さん?」

恐る恐る呼びかけてみるが

上司の呼び掛けには、
無視して、

武は、上司と直角にある
自分の席の受話器を持ち上げて、


何度もかけている電話番号を
ためらいもなく押した。


昴があわてて
「おいっ。武ーーーっ」

駆け寄るが、



「あ。もしもし、
 志保さんーーでしょうか?」

バカめ。


勝ち誇ったようにニヤリと笑った。