いつもは、割と 始さんのほうが『強い』んだ。

さすがお兄ちゃんというべきか、
自由奔放な 昴様を軽く 制するというか、

昴様も、なんだかんだで兄である始さんを慕ってるので
あえて逆らうこともせず、兄を立てる。


だが、

昴様はーー珍しく 兄である始さんを

じっと、睨み返した。



「・・・始兄さん。
 いくら、兄さんでも、それはダメだ。

 市川を、
 引き抜くことは 承知しかねるし、
 彼のーー弟を使って脅すことも反対だ。」


「--ふ。脅すなんて。
 これは、完全な ビジネス交渉だよ?」


なぁ。
と言って、弟のほうを見るが 顔面蒼白の弟は
はいとも、いいえとも とれる微妙な感じでうなずいた。


おいおい。


うちの 弟を脅してくれるなよ。

俺と違って優しくて、繊細なんだよ。


「はぁ。で?
 優はどうなんだ?」

「ば、ばかいえよ。この間の人事でやっと課長に昇格したんだぜ?
 しかも、上の子は今年受験だし・・・」

あぁ、そうだったな。