色鮮やかな前菜を見つめながら、
たわいもない話をしている始さんにしびれを切らす。

「・・・あの。」

「何?」

「・・・目的は、なんなんでしょう?」

「--ふふ。」

なんだよ。
なにか、用があって 俺の時間を抑えたんだろう?

「--一応、昴から聞いたんだろう?」

「えぇ、神原レイナお嬢様が、始さんの奥様のイトコである。
 ということでしょうか?」

「そうそう。
 そして、買収の件も聞いた?」

「・・・はい。」

「・・君が やってるのかと思ったんだよね。最初。」

「・・・?なにが、でしょうか?」




スープがさらりと目の前に置かれる。
始さんはニコリと笑ってどうぞ と進める。

あぁ、笑うと 目のあたりが上司である昴様にそっくり。


「レイナちゃんは うちの妻のイトコなんだ。」

「・・・はぁ。」

それは、昴様からも聞いた。
あの、何度か見かけたことのある 線の細そうな 柔らかい感じの。


「ーーー昴が、社会に出たときに、婚約の話が持ち上がってな。」

「はぁ。」

社会に出たとき、というと、ちょうど会社の常務に就任したころだ。
昴様はまだ 18歳の 若造だった。
そう・・・その時から 俺はずっと彼の秘書だ。

そのころから、生意気そうに 俺を茶化してくるから
よーーく 覚えている。