とある森に、父熊と三匹の子熊がいました。

 みんなでこれから川へ魚を獲りに行くのです。


「よーし!父ちゃんが魚をいっぱい食べさせてやるからな!」


 父熊がそう言うと、子熊達は一斉に喜びました。みんな魚が大好きなようです。

 川に到着すると、父熊は、川に入って魚をたくましい腕で次々に獲っていきます。

 ブウン!

 ブウン!

 魚が次々に陸地に上がっていきます。子熊達は、それを見て喜んでいます。


「よーし!たらふく食べなさい!」

「はーい!」


 父熊が言うと、子熊達は一斉に元気な返事をしました。

 むしゃむしゃと子熊達は、美味しそうに魚を食べていきます。

 父熊も、自分の分を獲って食事を始めます。

 しばらく経って、父熊は、食事を終えました。子熊達も終わったようですが、子熊達の魚が一匹残っています。

 どうやら、三匹のうち誰かが、残してしまったようです。


「こら!残さず食べなきゃダメだろ!」


 父熊が叱ります。

 しかし、子熊達は、三匹共お腹いっぱいなのでしょうか。お互い譲り合って、誰もその残った一匹を食べようとしません。

「お前達はこの魚に申し訳ないとは思わないのか!?
 もういい!この魚は、父ちゃんが食べる!」


 父熊は、もうお腹がいっぱいなのに、その残った一匹を平らげます。


「わぁ、お父ちゃん、食いしん坊だね〜」


 子熊の一匹が言うと、父熊は、じっと黙ったままその子を睨みます。

 そして、三匹の子熊達に言いました。


「明日から自分達で魚を獲りなさい」


 父熊は、それだけ言うと、黙って巣に帰っていきます。三匹の子熊は、戸惑いながら、父熊についていきました。