「え?奈未?」

その様子を見た咲羅は目を丸くして私を見ている。

「なんで……?」
「奈未誰からって……春樹じゃん」

咲羅は私の落とした携帯を取ってそのまま自分の耳へ……

「もしもしー?」

私の携帯に掛かってきたのは春樹。

だけど久しぶりに聞いた声で戸惑ってしまって落としちゃったんだ。

けれどきっと私は春樹から逃げてるだけ。

何も変わってない、ただ咲羅んちの居候だよ……

「……み……な、み……奈未!!」
「へ?」

名前を呼ばれて驚いていると咲羅が心配そうに私を眺める。

「春樹、喋りたいってよ」
「……」

思わず黙ってしまう。

私と喋りたいって何だろう……

どんどん不安が大きくなっていく。

「奈未、大丈夫だぞ」

咲羅は私の頭をなだめるように優しく撫でる。

そんな咲羅の後押しで私は咲羅から携帯を受け取る。

「……もしもし?」

頑張って絞り出した声は何となく震えている気がする。

<ごめんな?>

電話越しの声も何となく力なく感じる。

でもそんな声にさせているのは私だと思うと胸が締めつけられるように痛い。

「……何で謝るの?」
<何か奈未話したくなかったかなーと思って>

なんで…なんで…なんでよ……

どうしてそんなこと聞くの?

春樹らしくないよ、いつもみたいにバカみたいに自信持ってよ……

「バカ」

私の頬は自然と冷たくなっていた。

<え?>
「なんで…なんで…そんなふうに思うの?話したかったにきまってんじゃん!!」

もう最後はやけくそみたいに言う。

<だと思った>
「なら、なんでよ……ほんは会いたくて会いたくてしょうがなかったんだから!!」
<知ってる>

そう言う春樹は何だか笑っているような気がして今すぐ顔がみたくなった。

<奈未は携帯握り締めて俺に連絡しようか迷ってたんだろ?>

そうだよ…何でもわかってんじゃん……

<俺も同じだから>

そう言われるとわかってたのにどうしても手を伸ばしたくなる。

会えなかった時間が長過ぎてこれは幻なのかもしれないけど……今すぐ春樹に触れたくなる。

「ごめん、なさい……グスッ…」
<俺もごめんな?……泣くなよ、今すぐ会いたくなる>

会いたくなるなんて言わないでよ……

だって私は……

「会いたいもん……」

どんどん欲張りになっていく