祖母の家への帰り道、広くなだらかな草むらで、五、六人の子どもたちがボールで遊んでいた。ドッヂボールだろうか。そのうちのひとりが、花音に気づき、こっちを向いた。それにつられて他の仲間たちもこっちを見る。
いーれーて!とか言って友達になろうかと逡巡して花音が口を開きかけた。
しかし次の瞬間その子たちはカンペキなスルーを繰り出して、ボール遊びに戻ってしまった。

「えええええー」

明るい性格の花音にも、話しかけることはできそうにない雰囲気だった。


家に帰宅した花音は扇風機に当たりに行った。

テンションはおもいっきり低い。

あーーー。
最初っからこんなんじゃ、このさきどうなるっていうの?
はあ…と溜息をつき天井を見上げる。
はあ…

あの男の子、名前も聞いてなかったな…。
口ではきつそうなことを言っておいて、口調は今思い出すととても優しかった。
終始真顔でしゃべってたから、バカにした感じでもなかったし。
明日もブラブラしてたら会えるかな…。
次会ったら、まず名前を聞こう。

祖母が手伝いのために台所から花音を呼んだので、小さな計画立てを打ち切った。