「優里香、来たよ」

夏梨が小声で教えてくれた

でもそんなこと分かってた

大好きな人だもん

こっちに来たことくらい分かるよ…



夏梨の後押しの声が
公平くんに聞こえてしまったみたいで
夏梨の声に反応して
こっちを見てしまった

こんな状況で声なんて
かけられるわけない


後ろにいた夏梨が
ぐいぐい押してくる


それでも優里香は目線をそらしたまま
公平くんが通り過ぎるのを待っていた


いや、待っていたというより
いきなりの心拍数の上昇で
襲ってきためまいで

倒れないように体を2本の足で
支えるのに必死だったと
言った方が正しいかもしれない

とりあえず公平くんがどうとかよりも
自分の平常心を保つ方に必死で
何もできなかった