(……何で、もっと早く気づかんかった、あたし!)
「マジかよ……」
へなへなと座り込む。何か、力抜けた。馬鹿馬鹿しくてやってらんない。
なに、タイムスリップって?あたし何かしたわけ?
車に引かれそうになった猫助けた、ちょー善良な女子高生じゃん。何でこんな目に遭ってんすか。あんまりですよ、神様。
(ありえない。何かもう色々ありえない)
ありえない、ありえないと呟きながら頭を振るあたしに、土方は気味悪そうな目を向けた。
「本当に頭おかしいのか?この女。…しょうがねぇな、永倉。明日まで蔵に閉じ込めておけ」
「はいよ」
「ちょっと待て」
あたしの二の腕を掴み力づくで引き起こした永倉。どこ触ってんだ、コラ。
「何考えてんすか。頭おかしくなんかないですよ。何で閉じ込められなきゃなんないんです」
「テメェが何者か口割らねぇからだろ。間者である可能性があるうちは、野放しにはしておけねぇ」
「患者?あたしこの通りピンピンしてますけど。病人じゃないですよ」
「そっちじゃねぇよ!何なんだ本当に。グダグタ言ってると斬り捨てるぞ」
「ちくしょう」
あたしは無理やり永倉に引きずられていった。
部屋を出る瞬間、いや出てからもずっと、
“ちくしょう” と繰り返していた。