「今日も風が強いな~」

そんな独り言を口にしながら私は公園へ向かった。都会の大通りを自転車で颯爽と抜け細い路地に入ると、本当に都会なのか?と目を疑いたくなるような古い民家が立ち並ぶ道をただまっすぐ公園に向かって進んでいった。

「ごめん!遅くなっちゃった!」

「絢遅いよ~遅刻しすぎ~」

まだ5分しか遅れてないのに遅刻扱いしなくてもいいのにうるさいなぁ…なんて事を思っても言わないで笑顔でみんなに謝っている私はきっとマイペースな上に性格が歪んでいるのだと思う。

最近毎日この民家の奥にある人気の少ない公園で学校が終わってから集まってお菓子や飲みものを買って、制服でコソコソとタバコを吸いながら夜までその日の愚痴や、悩み、今日あったことなどを話している。

これといって私はすごく楽しいわけでもないが、女同士の関係というのは複雑で誘いを断ると二度と誘われない…だけではなくて下手をしたらイジメの標的になる可能性があるから私はみんなの意見に流され流され、自分を隠しながらみんなに嫌われないように日々を過ごしている。

「聞いてよ!!今日彼氏が女とさ~……」

また始まった。
いつも彼氏の愚痴を一通り話した挙句、結局最後は彼氏のノロケを話してみんなに「彼氏に愛されてるね」と言われないと納得いかないこの女が【宮下 薫】だ。
高校に入ってすぐのお昼休みにトイレで金髪のロングヘアーと大きな目をさらに大きく見せるためカラーコンタクトを入れてつけまつげをバサバサとさせながら、可愛い声を自慢するかのように急に「友達になろう」と言ってきたのは1年経った今でも印象深い。


「それで女と話してニコニコしてんの!」

「えぇ~彼氏さんに嫌って言いなよぉ~」

この語尾を伸ばして猫なで声で薫の意見に毎回毎回同調して、薫のご機嫌をとっているこの女は【市川 由紀奈】薫の幼馴染で小さい頃から2人はこんな関係らしい。薫と友達になってからいつも由紀奈は引っ付き虫かのようにどこでも薫の後ろを黒くて綺麗なツインテールの髪を揺らしながら着いてくる。

こんな何も面白くない話をただ笑顔で、同感してるかのように話を聞きながらタバコを吸って時間を潰しているのが私【神崎 絢音】茶髪のポニーテールは中学の時からずっと変わらない。ただ中学の時と変わったのは親に内緒でタバコを吸うようになった事と、高校に入るのをチャンスだと化粧の研究をしてギャルメイクをマスターして毎日短いスカートを履いて学校に行っている事くらいだ。中学の時の友達はこの荻越高校に誰も来なかったので昔を知ってる人はいないから私のこの風貌は中学からとなっている。いわば高校デビュー。

「で、薫はどうしたいわけ?」

これも恒例の言葉。ただ愚痴を話す薫に、細長い足を組んでタバコをかっこよく吸いながらサラッとまとめを話させる方向にシフトしてくれる【村岡 椿】このグループの中ではお姉さん的な存在で、モデルのような体に黒髪のストレートボブの髪を耳にかけてちょっとつり目の大きな目をアイラインで強調したメイクをしている。椿はこの公園の近くに住んでいて学校帰りに私たちが公園に来るまでの道でよく会ってて薫が話しかけたのがきっかけで仲良くなった。